有限会社HOT WIRE GROUP
当社は、高円寺経済新聞の発行、地元商店街を紹介するフリーペーパー発行、地域イベント制作など地域に密着した事業を展開しています。また、当社のビルの1、2階は高円寺純情商店街が主催するホテルで当社が委託されて運営を行っています。
その他、これまでに行ってきた町おこし事業、地域や商店街の方々と連携するイベント、プロモーションなどを通じて、高円寺との繋がりがどんどん深まったことで、区役所の観光課などとの仕事も手がけています。
商店街を紹介するフリーペーパーはもう20年以上継続して年4回発行し、広告は取らず、印刷費は当社負担、スタッフは手弁当ですが、著名な方でもこの媒体ならノーギャラでもいいと言って取材に応じてくださるようになりました。継続は力と言えますが、皆さんが喜んでくださるので無責任に止めるわけにはいかないというのも正直なところです。
私がずっと大事にしてきたのは人との関わりです。そして、関わっている人ができるだけ楽しく、やりたいことができるような仕組みを考えています。社員にもその人の得意分野を活かせるような会社でありたいと思っています。
新型コロナウィルスの感染拡大は、当社が手がける地元のイベントや商店街に多大なダメージを与えました。2020年4月〜8月までのイベントの受注はゼロ。ホテルは宿泊客の3割が外国人で2020年1月までは満室でしたが、その後は客足がパッタリ。そんな中でも、10月頃はやや新型コロナの感染状況が落ち着き、当社のメインイベントである14回目の高円寺フェスなどを実施できました。
2020年度後半は自治体の補助金事業などが動き、結果的にコロナ禍でも当社の売上はそれほど変わらなかったというのが実情です。しかし、地元商店街の小さな飲食店や物販店はコロナ禍でかなり疲弊。なんとかできないかと考える日々でした。
当社が手がける恒例のイベントにカレーフェスがあります。地元商店街のカレーを提供するお店を回る企画で、大変人気があり、例年2,000人くらいの参加者が集まります。
2020年5月のカレーフェスでは実施にあたり、行政から参加者全員の情報を集めるという要件が出されました。万が一感染者が発生した場合にその人の情報を辿るためです。
実はコロナ禍でも当社が主催のイベントについては中止ではなく新型コロナの状況を踏まえながら極力開催をしておりました。売上が落ちている商店街を応援したい気持ちと、経済を回さなくてはならないという想いからです。
しかし、この時のカレーフェスは感染対策の徹底とともに、参加者全員の情報を集めるという行政の要件をクリアしなければ実行できません。さてどうしようかと思案し、利用したのがPeatixというイベント管理の仕組み。参加希望者は時間帯ごとに定員を設け、ネットで予約、その際に個人情報を入力してもらう方法です。
これにより行政の要件をクリアできるうえに、時間帯ごとの整理券発行もできるので密になるリスクも解消します。当日は感染者が出ないようにするためにかなり神経を使いましたが無事にイベントを実施することができ、結果的にコロナ禍前と変わらない約2,000人が来場しました。
できない、と中止してしまうのではなく、できる方法を見つける。この成功体験がその後の当社の原動力になったと感じています。
東京2020大会もやる以上は応援したいですし、考えればできる方法はたくさんあるのでやるべきだと思います。もちろん規模は違いますが当社がイベントを実施できたように、きっと何らかの方法があるはずです。
その想いの根拠の1つに、当社から始まったある企画があるので紹介します。
コロナ禍で商店街は売上が激減。当社も仕事がなく、時間だけが余っていた2020年2月頃、ひとりの社員が「#高円寺テイクアウト」というハッシュタグをつけて高円寺でテイクアウトができるお店の情報をSNSで発信したところ、評判に。夜の営業のみだったバーやライブハウスでもテイクアウトのランチをやるようになり、「#高円寺テイクアウト」をつけてかなり盛り上がりました。
そこで、これほど皆さんに利用してもらえるならと、それらをまとめた無料で参加できる「高円寺百貨店」というポータルサイトを立ち上げたところ、多くのお店が待っていましたとばかりに参加してくれました。現在では、約200店舗が集まっています。その時、商店街の各店舗がコロナでいかに逼迫しているかひしひしと伝わってきました。
当社はプロモーションを強みとしているので、すぐに阿佐ヶ谷、荻窪、西荻にも声をかけてそのサイトのシステムを無料で提供し、4駅並んでそれぞれの百貨店を実現。それを知った浅草からもやりたいという声がかかり、西浅草百貨店ができています。
この活動により、店舗同士の連携が促進でき、コラボイベントやコラボメニューなどを考える動きも多々見られ大きな成果を上げられました。商店街は多くの店舗があって賑わってこそ自分の店も栄えるので、店舗同士はライバルではなく仲間意識が重要。そんな気づきを得ていただけた手応えもあります。
今後はユーザーに飽きられないような情報発信の工夫が課題です。当社は高円寺経済新聞や20年以上継続しているフリーペーパーなどの媒体を持つ、情報発信のプロ。高円寺でしか得られない情報を他の地域に配信するなど、話題づくりを仕掛けていきたい。
それにより、さらにいろいろなイベントも仕掛けやすくなるでしょう。事業としては大変なこともありますが、地道な活動を続けて、商店街や町の活性化に貢献できることが大きなやりがいです。