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手軽に泊まれるミニホテルを全国展開し、
移動の自由や人々の生活を支える
社会インフラを目指す。

株式会社旅籠屋

回答者
代表取締役 甲斐 真
事業内容
素泊まりを基本とするミニホテルの経営と運営

新型コロナにより稼働率と売上は急降下、社会情勢は向かい風

アメリカでは、モーテルという誰もが気軽に利用できる素泊まりの安いミニホテルがあり、その数はコンビニよりも多い。車で移動しモーテルに泊まりながら家族で頻繁に旅行を楽しめるようなライフスタイルを支える、自由で経済的な宿泊施設です。

このような宿が日本中にできたら日本人の旅行スタイルがもっと自由になり、自立した楽しみ方ができるのではないかと考え、前例のなかった日本でのモーテル経営に乗り出しました。それが当社旅籠屋のファミリーロッジ旅籠屋です。

1995年に1号店の日光鬼怒川店をオープン、2021年4月現在では全国77カ所にあります。「ファミリーロッジ旅籠屋」のお客様はほとんど国内在住の方でリピーター率が6割超と高いのも特徴。広告宣伝はあまりせずに、口コミメインで利用者が広がって順調に発展してきました。

しかし、2020年2月後半から新型コロナ感染拡大の影響が出始め、3月に稼働率も売上も急降下、4月は稼働率5割減、売上7割減。感染の第1波は稼ぎ時のゴールデンウィークを直撃し、第2波は夏休みと重なり売上は壊滅的な状態に。秋は一旦GoToトラベルで回復したものの第3波到来の2021年1月〜2月はまた最低の売上にまで落ち込みました。

ファミリーロッジ旅籠屋は予約客が9割以上ですが、キャンセル続出という平時ではありえない状況に見舞われ、さらに、自治体から休業要請もあり、近所の住人の方からの抗議の声や、支配人らの不安の声も挙がりました。

なくては困る社会インフラだからこそ、全店通常営業を続ける

コロナ禍でも、「自由な旅」=「移動の自由」を支える社会のインフラとして、全店舗が1日も休業することなく営業を継続しています。ファミリーロッジ旅籠屋は必須の社会的基盤である、これが絶対的なポリシー。コロナ感染対策を徹底しながら、平常心で全てのお客様を受け入れる方針を掲げています。

なぜならファミリーロッジ旅籠屋を必要としている方がいるからです。例えば、テレワークができるのは一部の人だけで、世の中には現場に行かなくては仕事ができない人も多く、そういう方々には宿泊場所が必要。また、医療従事者の方々に対する偏見があり、自宅に帰ることが困難であるなどひどい状況が見受けられたことから、私どもは病院に呼びかけて医療従事者の宿泊を受け入れたところ、大変喜ばれました。

さらに、これまではカップル向けの風営法営業ホテルとの混同を警戒して昼間の利用を禁止していましたが、部屋が広くネット環境も整備しているのでテレワークに使いたいという要望があり、2020年3月からデイユースも実施。1人使用限定で、9時〜17時まで1日3千円、売上としては微々たるものですが社会のニーズに応えるという意味では必要だと考えて導入しました。

そもそも、天災や何かが起きた時に宿泊施設は被災者の命を守るシェルターだという想いが大きく、2011年の東日本大震災の時に東北の各店舗は多くの被災者の方を無償で受け入れました。その時に停電で困った経験から、その後オープンする店舗には全てプロパンガス式の非常用発電機を完備しています。法的義務はありませんが、これはのちに岡山の水害時や、函館の大停電の際にその地域の店舗周辺の方々のために大変役立ちました。

そして、コロナ禍で業績が厳しい中でも2021年4月に77店目となる山形県庄内店をオープン。これは3年がかりの案件で、自治体からの出店要請に応じたものです。人口減少で悩む自治体の町おこしに常設の宿泊施設は必須であり、ファミリーロッジ旅籠屋は規模感などが条件に適合し、国の補助金等を使いながらやっと実現しました。コロナだからと止めるわけにはいきません。同様に町おこしを趣旨とした自治体からの出店要請の相談は、現在でも日々多く寄せられています。

つまり、コロナ禍でも休まず営業を続けているのは、従業員の生活を守るためと同時に、当社の掲げる社会インフラとしての使命感からなのです。先行きが不透明な今は新規出店を見合わせていますが、今後、状況を見ながらさらに具体化も考え、事業拡大を図っていきます。

自転車で日本一周できるくらいの店舗網を目指し、個人の移動の自由を支え続ける

もともと全国何店舗達成とか売上何億円達成など数字の目標のために起こした会社ではなく、車社会のインフラ整備に貢献したいという将来に向けてのビジョンを抱いてきました。従って、少なくとも全都道府県に1軒ずつ旅籠屋の店を開設し、日本全国ある程度の距離の中にくまなく、分かりやすく言えば旅籠屋に泊まれば自転車で日本一周できるくらいの店舗数を目指したいと思っています。

1970年代のオイルショックの時に、不要不急のマイカー旅行自粛というキャンペーンが張られました。今のコロナ禍でも然りですが、個人の自由を制限するべきではないというのが私の考えです。文化を守るとか、一人ひとりの生活や尊厳を守るという意識をもっとしっかりと持ってほしい。個人の意志よりも周りの顔色を気にしてしまう、そこが日本人の弱いところだと思っています。同調圧力に屈せず、前向きに力を合わせて乗り越える。そんな日本の姿をぜひ見たいと期待しています。

  • 企業名 株式会社旅籠屋
  • 所在地 〒 111-0042 東京都台東区寿3-3-4旅籠屋ビル
  • 創業年 1994年会社設立、1995年創業
  • 従業員数 262人
  • 業種 サービス業
  • URL https://ssl.hatagoya.co.jp/