株式会社フォーラムエイト
当社は、1987年の創業当初から「社会性」「先進性」「協調性」の3つを理念に掲げて大事にしてきました。「社会性」とは、構造物など社会的な共有財産やインフラに関わる設計ソフトやシミュレーションソフトを提供し、社会のニーズに対応すること。「先進性」は、IT、ICTの技術を先行的に開発すること。「協調性」は、10数万人のユーザーと長いおつきあいをさせていただいており、お客様から重要な情報を得ることも多々あるので、日頃の関係を大事にしていること。
その理念のもと、パッケージソフトウェア開発技術を核として、土木・建築設計をサポートするソフトウェア・技術サービスを提供。1990年代から3D技術をソフトウェアの中に組み込んで提供し、その後、時代のニーズの変化とともに、交通・自動車分野での交通解析、交通シミュレーション、運転シミュレーション、ドライビングシミュレータといった、ソフトウェアとハードウェアのインテグレーションによる製品を開発し、交通安全訓練や最近では自動運転の研究にまで活躍の場が広がっています。
新型コロナウィルス感染症拡大の影響は、営業面で受けています。例えば大規模なシステムや研究には相当な回数の打ち合わせや現場に足を運ぶことが必要ですが、それが不可能に。自動車系のシミュレータなどハードウェアは現場への納品が難しくなり、売上が低減。もっとも大きなダメージは、展示会の中止でした。例年は、海外で約20回、国内で40〜50回の展示会に出展し、そこで当社の開発した新製品の発表を行うなどの営業活動を行っていたのですが、それができなくなったのは痛手です。オンラインでの展示会もありますが、効果はいまひとつ。最近はまたリアルの展示会もいくつか開催されるようになってきましたが、まだ集客は従来の7、8割にとどまっており、営業効果はかなり落ちています。
今回のコロナ禍では、当社が以前から先駆けてコツコツと取り組んできたことが幸いして、課題の対策になったという状況です。東京商工会議所のBCP導入プロジェクトに応募して第1号の認定を取得し、BCP体制が確立できていたことが、今回のパンデミックでも非常に役立つ結果となりました。一例を挙げると、取締役は全員、東京本社から徒歩圏内に住んでいるので、非常事態が起きてもすぐに集結しトップマネジメント機能をフル回転することが可能でした。社員の7割はテレワークにしましたが、コミュニケーションを潤滑にするためグループウェアを活用。それも自社開発のものを自社仕様に使いやすくカスタマイズし、ワークフロー、各種申請、ユーザーサポートまでこのグループウェア内で行うことができます。これは、コロナ禍前から使っていたので今回テレワークが一気に増加しても特に慌てることはありませんでした。
もう一つ、大事にしてきたのは人材の採用と教育です。先端的な開発には情報が必須ですが、英語圏の情報は日本語の情報の10倍もあり、そこで遅れを取るわけにはいかない。そこで当社ではダイバーシティを重視した多国籍なスタッフを採用。取締役も女性や外国人など多様性を重視しています。また、2020年からテレワーク正社員の採用も始めました。こうした多様な人材、多様な働き方が、柔軟でチャレンジングな開発を進めることを可能にしています。
2020年の展示会で発表したバーチャルプラットフォームは、コロナ時代、テレワーク需要に必須のニーズに合致し、有力な商材として期待でき、コロナ禍によるテレワーク需要で2020年3月〜4月に売上が急増しています。これは、web上の三次元空間で見たり触ったり色々な体験をできるもの。2021年が明けてすでにバージョン2を発表しています。前々からあった構想をもとに2020年初頭から開発に着手した案件で、コロナ禍でも研究開発に注力してきた成果の一つと言えましょう。
結果的に、2020年9月期の決算は、システム受注などが落ちたため売上は減少しましたが、多数の国内外展示会が中止となり、莫大な出費が発生しなかったことなどが要因で利益は過去最高に。2021年度も前期並みの利益を確保できる見通しです。
当社はスポーツを応援したい気持ちが強くテレビのゴルフ番組や、地元の港区ハーフマラソンのスポンサーを務めています。同様に応援したい気持ちから、東京2020大会の成功を祈っています。当社の30周年の特別講演では全日本柔道連盟会長でJOC会長の山下氏に講演を依頼したご縁もあり、東京2020大会を非常に身近に感じて楽しみにしているところです。東京2020大会により、スポーツブームが起きると、そこにまた多くのビジネスチャンスもが発生すると期待でき、当社では医療分野など新たな事業領域への挑戦も増えるのではないかと考えています。
中小企業にとって、成長なくして存続はない。その成長を支えるのは社員、人材です。従って、当社ではさらに人材採用を強化するとともに、働きやすい環境整備を一層推進していきます。毎年、健康経営優良法人の認定を取得している健康経営への取り組み、社員が無記名で自由に意見を提出できるエンゲージメントや、セミナーによる教育の充実など。2020年から社長秘書室を新設し、そこではヘッドハンティング的なリクルートや外国人採用を担当しています。今後はサイバーセールスが非常に重要になると捉え、そこに適した人材活用も図っていく考えです。
そして、先進的な開発に取り組む姿勢を今後も貫くことが将来へのパスポートと心得ています。DXの時代、従来のテキストベースや画像ベースのグループウェアではなく、バーチャルプラットフォームを統合した三次元的なグループウェアが必要になる。そこに当社ならではの開発力で、より高度化する課題に取り組んでいきたいと思います。