株式会社剛力建設
剛力という社名は、登山者の荷物を背負い、道案内をする人。大変な仕事ですが、必要であり、喜ばれる存在です。当社も自ら汗をかき、人のため社会のためになる仕事をモットーにしており、ご縁を大事にしています。
元々は機械式駐車場メーカーの下請け業でしたが、人口減少の社会情勢に鑑み、空きが目立つ機械式よりメンテナンスコストがかからない平置きの駐車場のニーズが高まっていることから、平置き駐車場メーカーとなりました。メイン商品は鋼製平面駐車場「スマートデッキ」で、マンションなどに多くある従来の機械式からの転換にビジネスチャンスを見出しています。
経営理念は「清く、正しく、美しく」。困難や障害にぶつかった時もこの理念に立ち返って実直になりますし、現場や会社も綺麗に保つことで気持ちも整います。また、当社では社員の肩書きは社員自らが決めて自由に名刺に入れており、給料の額も自分で決めます。それが結果的にやる気につながり、社内の活性化が図れています。
下請けから脱却し、今日まで会社を成長させて来られた原動力は「まずはやってみる」というチャレンジの姿勢。7年前には人口約14億人の中国市場に挑戦し、化粧品や日用品などを輸出する卸も行うように。新規参入の壁が立ちはだかりましたが、この時も「まずやってみる」姿勢と「ご縁」を活かして実現できました。その結果、当社の売上構成比は建設業6割、卸売業4割となっています。
新型コロナ感染症拡大の影響は、建設業に大きく響いています。従来の機械式駐車場からスマートデッキへの転換や大規模修繕などの案件が多数ありましたが、ほとんどが難航。マンション管理組合の総会がコロナ禍で開かれず採決できないため先送りになっていることが主な要因です。現在もまだ人々のマインドが動かず、もうしばらくこの状況は続くと予測しています。
当社ではコロナ禍以前から、建設業の6次産業化に取り組んでいます。企画設計・現場施工(一次産業)、製作加工)二次産業)、販売・コンサルティング(三次産業)を垂直統合して6次産業にすれば、お客様の声が工場にも現場にも伝わる。この仕組みで内製化を図ることが、建設業が生き残っていくための肝。水平統合ではお客様の声が反映できず、また部材などを外注頼みにしていては有事の時に弱い。だから6次産業化が重要なのだという信念を貫いています。2020年5月にはコロナ禍にも関わらず、千葉県に300坪の工場を新設し、スマートデッキの内製化体制を確立しました。
また、2019年10月からは、東京工業大学との産学連携研究開発が始まり、第一弾として取り組んだ、3D自動図面化システムが2020年1月に完成。4月には実用化されました。これによりこれまで建築士に外注し、1週間もかかっていたスマートデッキの設計図面が、瞬時に吐き出されるようになりました。近い将来には3D情報のまま、マシンツーマシンで一気に製造加工までが可能になります。続いて第二弾は次世代時間貸駐車場システムを開発中です。これはカメラとAIによるアルゴリズム認証で、フラップなしの駐車場を実現できる仕組みで、従来の数分の一の費用でコインパーキングが開業できます。
イノベーションのヒントは常に現場に転がっている。我々が持つ現場の知見と大学の研究者の頭脳を組み合わせれば、社会に活かせる様々なアイデアが実現可能になっていくと確信しています。新規案件も進行中。産学連携はやがて大きな事業成果を生み出す未来への種蒔きだと取り組んでいます。
東京2020 大会は、国内外に向けてコロナに打ち勝ったというメッセージになることを期待しています。どんな形にしろ、自国開催を体験できるのはその時代に生きている人にとって僥倖なので、精一杯応援したいと思います。大会開催にあたり課題が山積していますが、私が伝えたいのは、やったことがないことでもやってみれば、何かできるようになるということ。
私自身、2016年からボランティアで子ども食堂を始めました。当初は全く料理経験がなかったのですが、自ら包丁を握って食事を作るようになり、開催回数が200回を超えた現在も継続できています。毎回違ったメニューをどうやって決めるのかと聞かれますが、子どもたちの喜ぶ顔が見たいから、必死で考えるわけです。すると、天からアイデアが降ってくる。人間は追い詰められれば絶対に天からヒントやアイデアが降ってくるもの。それがイノベーションに繋がるのです。
イノベーションとは、インターネットやIT関連からしか生まれないものではない。どんなところからでも雑草のように生まれて花が咲くものだと思ってほしい。その取り組みを当社が実践し、多くの人々に勇気と元気を与えたいと思います。今この激動の時代に生きている私たちは大変ですが、ネットやデジタルなど様々なツールがります。それを活用し、いろいろ試してみて、汗を流す。様々な研究開発をしていくと多くの課題に直面しますが、それを乗り越えていくことでチームワークが生まれ、試行錯誤の果てに成功が得られる。なんでもまずはやってみよう、の精神が大事なのです。誰にでもチャンスはありイノベーションができるのだと当社が証明していきたいと考えています。